在庫管理とは?実施する目的や効率化するための方法、課題を徹底解説!
店舗・工場・倉庫には、多種多様な原材料・半製品・製品などが保管されます。仕入れた原材料や製造した製品などの保管業務に携わっている方は、日々、「どのように在庫を管理すれば良いのだろうか」と頭を悩ませているのではないでしょうか。
本記事では、在庫管理の目的や具体的な手法を詳しく解説し、在庫管理を効率化するための方法や、在庫管理に関する課題、在庫管理システムの導入が課題解決に役立つことをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
在庫管理とは
在庫管理とは、必要な数量の商品を供給・販売するために、在庫の数量・状態を適正な水準に保つ行為です。なお、在庫とは、保管中または輸送中の棚卸資産(原材料・半製品・製品など)を意味します。
在庫が不足する場合、注文があっても顧客に販売できず、機会損失が発生しかねません。過剰な在庫を抱えると、保管コストが増大します。売上を拡大し、コストを削減するためには、適切な在庫管理が不可欠です。
在庫管理の目的
以下は、在庫管理を実施する目的です。
- 在庫の最適化により生産性を向上させる
- 適正な在庫量を確保することで無駄なコストを削減する
- キャッシュフローを安定させる
それぞれに関して詳しく説明します。
在庫の最適化により生産性を向上させる
在庫の最適化を実施することにより過剰在庫や不足を防ぎ、生産ラインの停止を回避します。また、リードタイムの短縮により欠品リスクを減少させ、顧客満足度と売上が向上すると共に、効率的なスペース利用によりピッキング作業の効率が上がります。これらにより、資金の効率的な運用が可能となり、全体的な生産性が向上します。
適正な在庫量を確保することで無駄なコストを削減する
在庫の数量を適切に管理すれば、余剰在庫の発生を抑制でき、保管コストの削減につながるでしょう。
なお、保管コストの具体例としては、棚卸作業にかかる人件費、保管場所の入れ替えに必要なフォークリフト稼働費、保管場所の環境を維持するための空調費などが挙げられます。
キャッシュフローを安定させる
他社から商品を仕入れた場合、買掛金が発生し、期日までに支払う義務が生じます。自社工場で製造し、在庫として保管している商品に関しても、原材料などの買掛金が発生しており、期日までに支払う義務があることにご留意ください。
在庫は「資産」として財務諸表に記載されますが、現金が手元にあるわけではありません。在庫として保管されている商品が売れないまま時間が経過すると、資金の流れが止まり(現金を確保できず)、期日までに支払義務を履行できない可能性があります。
過剰在庫が原因で資金繰りが悪化すると、帳簿上は黒字であるにもかかわらず、倒産に追い込まれるケースもあるので注意しましょう。在庫管理を実施して、適切な在庫量を維持すれば、キャッシュフローの改善・安定につながります。
在庫管理の具体的な手法
在庫管理の具体的な手法は、以下の2種類から選択可能です。
- 在庫管理表を作成する
- 在庫管理システム・アプリを活用する
各手法に関して詳しく説明します。
在庫管理表を作成する
在庫管理表とは、商品名・品番・数量・日付などが記入された表で、日々の商品の入庫・出庫を記載することで現在の商品の在庫数量と棚卸金額を計算するために使用します。
在庫の数量・種類があまり多くない場合や、在庫管理用のITツール(在庫管理システム)を導入する予算が確保できない場合は、在庫管理表の使用も選択肢になります。
ただし、昨今はITが急速に進化しており安価なツールが多数あります。基本的には在庫管理システム・アプリを活用し、システムが対応できない特殊な計算を使う場合にExcel等を使って保管する運用を考えましょう。
在庫管理システム・アプリを活用する
紙にスタッフが手書きで、あるいは表計算ソフトを用いて手作業で在庫管理表を作成するためには、多大な時間・労力を要します。また、誤字脱字や入力ミス、記入欄の選択ミスといったヒューマンエラーについては、入力する件数が多くなるほど発生しやすくなります。
在庫の数量・種類が30種類を超える場合は、ITツール(在庫管理システム・アプリ)の活用を検討するべきです。ITツールを導入すれば、ヒューマンエラーが抑制され、リアルタイムで在庫状況を確認できます。なお、様々な企業が多種多様な在庫管理システム・アプリを開発・提供しているので、機能や価格などを比較し、自社に適したものを選びましょう。
在庫管理を効率化するための方法・概念
以下は、在庫管理を効率化するための方法・概念です。
- ABC分析
- 在庫回転率
- ロケーション管理
- 適切な原価管理方法
- 棚卸し
各方法・概念に関して詳しく説明します。
①ABC分析
ABC分析とは、取り扱っている商品群を、重要度に基づいて上から順に3グループに分け(優先順位を付け)、分析する方法です。例えば、売上構成比(総売上に占める割合)が高い商品群を「Aランク」、中程度の商品群を「Bランク」、低い商品群を「Cランク」に分類し、各ランクの在庫状況やコストなどを比較・分析します。
倉庫で保管されている全商品が、コンスタントに出庫されるわけではなく、何年も動かないアイテムが存在する場合もあるでしょう。ABC分析を実施して、活発に流動する商品群の把握に努め、優先的に管理するべきです。そして、経営資源を集中的に投入する製品や、取り扱いを縮小する製品を選定してください。
②在庫回転率
在庫回転率とは、一定期間内に在庫をどのくらい効率的に回転させているか(入れ替わっているか)を示す指標です。以下の式で算出されます(期間中の平均在庫数は「(期首在庫数+期末在庫数)÷2」で計算)。
在庫回転率=期間中の総出庫数÷期間中の平均在庫数
適切な在庫回転率は、業界や企業(取り扱っている商品)によって異なります。消費者ニーズの変動が激しく、頻繁に新商品を投入する業界では、高い在庫回転率を実現しなければなりません。他方、高額商品や特定の季節に需要が集中する商品を取り扱っており、ある程度の在庫を保持する必要がある場合は、低い在庫回転率でも適切とみなされます。
③ロケーション管理
ロケーション管理とは、保管する場所(ロケーション)と商品を紐付けて在庫管理を実施する手法です。どの商品がどこに保管されているのかを迅速に把握でき、倉庫内を探し回る労力・時間の削減につながるでしょう。
棚の場合は、1段ごとに管理することをおすすめします。また、平置きしている場合は、床に線を引いて管理するなど、保管場所の状況に適した方法を検討してください。
④適切な原価管理方法
在庫管理の出荷時に計上する原価計算方法には、先入先出法・後入先出法・移動平均法・標準原価法など様々です。例えば食品業界や飲料業界については賞味期限、医薬品業界や化粧品業界については使用期限があります。
このように有効期限がある製品を扱う業種については先入先出法を採用することで在庫の劣化や廃棄を防ぎ、品質を維持することができます。一方で、建設業や石油・ガス業界については日々の価格変動が激しいため、最新の高価な在庫を先にしようする事で、在庫評価において最新の市場価格を反映させることで、価格変動リスクを軽減することができます。
自社にあった適切な原価管理方法を選ぶことで財務報告におけるより現実的なコストの反映や、安全で高品質な商品の提供が可能となり、企業の信頼を高める事が出来ます。
⑤棚卸し
棚卸しとは、企業が保有する在庫の数量や価値を確認し、実際の在庫と帳簿上の在庫が一致しているかを検証するプロセスです。棚卸を行うことで、在庫の正確性が向上し、不正やミスの早期発見が可能となり、財務報告の信頼性が高まります。
また、在庫の過不足を把握することでコスト管理が改善されます。一方、棚卸を行わないと、在庫の不正確さや不正・ミスの見逃し、財務報告の誤り、コスト管理の不備など多くのデメリットが生じるリスクがあります。
在庫管理に関する課題
以下は、在庫管理に関して、しばしば発生する課題です。
- 管理ルールが統一されていない
- 管理の精度が低く、在庫の過不足が発生する
例えば「在庫記録の方法が統一されていない」場合、各担当者が異なる方法で在庫を記録するため、在庫データが一貫性を欠き、正確な在庫状況が把握できなくなります。これにより、過剰在庫や欠品が発生しやすくなります。
この問題を解決するためには、在庫記録の方法を統一するためのルールを制定します。例えば、バーコードスキャナを使用して全ての入出庫を記録することや、特定のフォーマットで在庫データを入力することを義務付けることで、各担当者がバラバラに在庫を記録する状態が解消し、正確な在庫状況が把握できるようになります。
また、人的ミス(入力ミス・計算ミスなど)が原因で、在庫の過不足が発生する場合もあるでしょう。管理の精度を高めたいのであれば、手作業ではなく、ITシステムを導入して可能な限り自動化するべきです。
在庫管理の課題解決にはシステム導入がおすすめ
在庫管理の課題解決には、ITシステム(在庫管理システム)の導入が有効です。在庫管理システムを導入するメリット・デメリットの概略を表にまとめました。
メリット
- ヒューマンエラーが減少する
- 正確に在庫品をチェックできる
- 余剰在庫削減や欠品防止に役立つ
- リアルタイムで在庫状況を把握可能
- 発注・入出庫に関する判断を迅速に遂行できる
- スタッフの業務負荷が軽減される
デメリット
- 初期費用やランニングコストがかかる
- 在庫管理システムを使いこなせる人材を採用・育成しなければならない
以下、メリットおよびデメリットに関して詳しく説明します。
在庫管理システムを導入するメリット
在庫管理システムを導入すれば、ヒューマンエラーが減少します。正確に在庫品の数量をチェック可能で、余剰在庫削減や欠品防止に役立ちます。リアルタイムで在庫状況の把握が可能で、発注・入出庫に関する判断を迅速に遂行できることも魅力です。
バーコードをスキャンするだけで自動的にデータベースに送信されるシステムなら、スタッフが手で入力する手間がかかりません。スタッフの業務負荷を軽減するために、在庫管理システムの導入を検討してはいかがでしょうか。
在庫管理システムを導入するデメリット
在庫管理システムを導入・運用するためには、ある程度の初期費用やランニングコストがかかります。また、在庫管理システムを使いこなせる人材を採用・育成する必要もあることにご留意ください。
ただし、「入力ミスによるクレーム」「効率化しなかった場合に発生する残業代(人件費)」などを考慮すると、費用がかかることを差し引いて投資すべきと判断できる場合もあるでしょう。
なお、クラウド型のサービスなら、カスタマイズ性が低いというデメリットはありますが、自社の構内にサーバーなどの機器を設置する必要がありません。コストを抑制できるので、予算の制約がある企業でも導入しやすいでしょう。
在庫管理システムを活用するためのポイント
経営陣や管理職が上から一方的に押し付ける姿勢ではなく、在庫管理システムを導入・活用する意義を従業員に丁寧に伝え、理解を得るべきです。企業側にとってのメリット(余剰在庫削減や欠品防止など)だけではなく、従業員側にとってのメリット(負担が軽減されること)も説明しましょう。
また、操作マニュアル・教材を作成し、在庫管理システムの操作に関する教育・研修を実施することも不可欠です。システムだけを導入しても、使いこなせるスタッフが現場にいなければ意味がありません。
在庫管理システムの情報収集は「店舗DX EXPO」へ
RX Japan(株)が主催する展示会「EC・店舗 Week」内の「店舗DX EXPO」では、在庫管理に役立つシステム・ソリューション・サービスが数多く展示されます。在庫管理の課題を解決したい場合は、ご来場の上、情報を収集してはいかがでしょうか。
また、在庫管理に役立つシステム・ソリューション・サービスを開発・販売する企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
在庫管理の重要性を認識し、自社に適したシステムを導入しよう
在庫を適切に管理すれば、生産性向上やコスト削減、キャッシュフローの安定を実現できます。なお、手作業で在庫管理を実施するとヒューマンエラー(計算ミス・転記ミスなど)が発生しやすいので、在庫管理システムを導入するほうが良いでしょう。
特に先述した通り、昨今は安価なツールも多数あるため中小企業でも導入しやすくなってきており、「自社にあったシステムを探す」という目的においては最も適した展示会です。
RX Japan(株)が主催する展示会「EC・店舗 Week」内の「店舗DX EXPO」では、在庫管理に役立つシステム・ソリューション・サービスが数多く展示されます。在庫管理の課題を解決したい場合は、ご来場の上、情報を収集してはいかがでしょうか。また、在庫管理に役立つシステム・ソリューション・サービスを開発・販売する企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
「EC・店舗Week」詳細は こちら
▶監修:田中嘉浩氏
プロフィール:TOMAコンサルタンツグループ株式会社 DX推進コンサル部 部長
システム会社での開発から運用の経験を活かし、中小企業でのシステムリプレイスや業務の可視化を中心に活躍中。特に経営者から担当者まで全体を見渡したプロジェクトの管理と進行能力は評判で、「安心と信頼」をモットーに中小企業~大企業まで幅広くIT化を推進している。