ビッグデータとは?分析手法やメリット・デメリット、活用事例などを詳しく解説!
近年、多くの企業がビッグデータを分析し、マーケティングなどの施策に活かしています。他社との競争に打ち勝つためには、ビッグデータの利用が欠かせません。
新聞やテレビのニュース、セミナー、会議などでも、「ビッグデータ」という単語を見聞きする機会が増加しました。しかし、「どのようなデータをビッグデータと呼ぶのだろう」「分析方法・活用方法を把握できていない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ビッグデータがどのようなものなのかを解説し、分析手法や、ビッグデータを活用するメリット・デメリット、活用事例もご紹介します。
ビッグデータの分析手法(処理・解析技術)
近年、AIによってビッグデータを分析する手法が発展している
ビッグデータを活用するメリット
効果的なマーケティング施策を立案できる
高い精度で将来の状況を予測できる
勘に頼らない意思決定が可能
ビッグデータを活用するデメリットや課題
分析スキルを有する人材を確保しなければいけない
個人情報・プライバシーの保護が課題として挙げられる
クラウド型でもオンプレミス型システムでも情報漏洩対策が必要
ビッグデータの活用事例
活用事例①リアルタイムで交通情報を提供するサービスを実施
活用事例②農産物の生産効率・品質を向上させる
活用事例③メンテナンスの効率化を実現
ビッグデータを活用する上で注意するべきポイント
セキュリティ
個人情報保護
ビッグデータとは
ビッグデータの定義は論者によって異なり、明確に決まっているわけではありません。ただし、曖昧ではあるものの、以下に示す要素を有するデータをビッグデータと呼ぶ傾向が見受けられます。
- 量が膨大(数テラバイトから数ペタバイト程度までが目安)
- 種類が多い(テキスト、音声、画像、動画、位置情報など)
- リアルタイム性(発生速度・頻度が高く、処理にスピードが要求される)
近年、IoTの技術の進歩により、ビッグデータの効率的な収集・解析が可能になりました。競合他社との競争に勝ち、企業が成長するためには、ビッグデータを事業活動に活かすことが不可欠です。
ビッグデータの類型
ビッグデータは、オープンデータ、暗黙知に関するデータ、M2Mデータ、パーソナルデータの4類型に大別されます。下記に、それぞれの概要をまとめました。なお、暗黙知に関するデータとM2Mデータをまとめて「産業データ」と総称する場合もあります。
オープンデータ:国や地方公共団体が提供するデータ
暗黙知:企業などが有する暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したパーソナルデータ以外のデータ
M2M(Machine to Machine)データ:工場のIoT機器から収集されるデータや、橋梁に設置されたセンサーからのセンシングデータなど
パーソナルデータ:個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された情報など
上記とは別に、「構造化されているかどうか」の観点・切り口でも分類できます。顧客データ・在庫データ・各種統計データなど、表形式に変換できる(すでに変換されている)データは「構造化データ」と呼ばれ、集計・分析が容易です。
他方、監視カメラ映像、商品・サービスに関する口コミ・レビューなど、規則性がなく、表形式への変換が不可能(困難)なデータは「非構造化データ」と呼ばれます。
ビッグデータの分析手法(処理・解析技術)
ビッグデータは、そのままではビジネスに活用できないため、多種多様な手法を用いて処理・解析されます。下記の分析手法を参考に、状況に応じて使い分けましょう。
クロス集計
- データを属性別に分類し、傾向を分析する手法
- 統計学の知識が不要で、表計算ソフトで分析できる
回帰分析
- 何らかの変量(値が変動するもの)がある場合に用いられる手法
- 変動の原因を統計的に究明し、回帰モデルの数式を求める
アソシエーション分析
- 2つ以上の商品・サービスなどが、どのように関連しているかを分析する
- 「連関分析」とも呼ばれる
クラスター分析
- グループ分けを実施し、データの性質や傾向を把握する手法
- 例えば、年齢・家族構成などから既存顧客のグループ化を実施し、グループごとの売れ筋商品を分析する
決定木分析
- 「はい」「いいえ」で回答できる質問を繰り返す
- 回答結果から、条件と行動の因果関係などを探る
主成分分析
- 複数の変数から構成されるデータを、いくつかの変数(主成分)に絞り込むことで、データの特徴を捉える手法
- 変数を集約することで、分析結果をグラフなどで表現できる
クロス集計の場合、表計算ソフトがあれば、統計学に関する専門知識がなくても分析できます。しかし、統計学の専門知識が必要な手法もあるため、ビッグデータを分析するのであれば、データサイエンティストを雇用するか、外部専門家への委託もご検討ください。
近年、AIによってビッグデータを分析する手法が発展している
近年、AIが急速に進歩し、文章や画像、動画、音楽などを生成するサービスがリリースされていますが、ビッグデータの分析にもAIが活用されています。
例えば、2017年12月にNASAは、AIによるビッグデータ分析に基づいて惑星(ケプラー90i)を発見しました。また、米国エネルギー省の研究チームは、大量の遺伝子情報をAIで分析して約6,000種類のウイルスを発見したことを2018年3月に報告しています。
AIの技術を用いて膨大なデータを収集・分析し、得られた情報から企業活動に活用することが可能です。また、ビジネスにおいてAIのデータ活用は、経営判断の決定をサポートしてくれる重要な手段になりつつあり、企業の競争力強化にもつながります。
ビッグデータを活用するメリット
ビッグデータの活用によりデータ分析の精度が高まりますが、「具体的にどのようなメリットがビジネスにあるのだろうか」と感じる方もいるでしょう。以下、主なメリットを3つご紹介します。
効果的なマーケティング施策を立案できる
ビッグデータを解析し、消費者のニーズを正確に把握すれば、効果的なマーケティング施策を立案できます。
例えば、ECサイトを運営している場合、多くの消費者が商品Aと商品Bを同時に購入していることが、ビッグデータの解析で判明するケースがあります。消費者が商品Aを選択した際に、「おすすめ商品」として商品Bも提示すれば、売上増につながるでしょう。
高い精度で将来の状況を予測できる
ビッグデータを分析すれば、将来の状況をより正確に予測できるようになります。
具体的には、自社保有データ(Webサイトのアクセス記録、過去の来客者数など)と、政府・自治体の公開データ(気象データ・人流データなど)を組みあわせて分析するケースが挙げられます。来客者数や属性などを予測して適切なリソース配分を実現できれば、無駄な在庫や人員を抱えずに済み、利益の増加につながるでしょう。
勘に頼らない意思決定が可能
ビジネスに関する方針を決定する際に、勘に頼っているケースがあるかもしれません。しかし、勘に頼って経営していると、運よく売上につながる場合もあれば、売上不振に陥る場合もあることにご留意ください。
安定的に売上を拡大するためには、ビッグデータ分析の結果を踏まえて戦略を立案し、明確な根拠に基づいて方針を決定するべきです。
ビッグデータを活用するデメリットや課題
ビッグデータは有効活用ができる反面、ビッグデータの収集と解析がプライバシーの侵害につながる場合があります。 以下、デメリット・課題を3つご紹介します。
分析スキルを有する人材を確保しなければいけない
上述したように、ビッグデータを分析する際には、統計学の専門知識が必要な手法が多数用いられます。社内に統計学に詳しい人材が在籍していない場合は、教育・研修を実施して育成するか、外部からデータサイエンスに関する専門的な知識・スキルを有する人材を採用しなければいけません。
新規に採用する場合は、一定のコスト(求人広告の出稿費用、人材紹介会社への紹介料支払いなど)がかかります。雇用する選択肢の他に、外部業者が提供するビッグデータ分析支援サービスの利用も検討しましょう。
個人情報・プライバシーの保護が課題として挙げられる
複数のビッグデータを組みあわせることで、個人を特定できるケースもあることにご留意ください。ビッグデータを収集・分析・保存する際には、個人情報やプライバシーの保護に努めなければいけません。
例えば、カメラを用いて来店者の情報(年齢・性別など)を収集するのであれば、必要なデータのみを保存し、映像データは速やかに削除しましょう。また、保存するデータに関しては、匿名加工処理を実施するべきです。
対応方針に不安がある場合は独断で決めるのではなく、社内で議論し、弁護士から法的アドバイスを受けましょう。
クラウド型でもオンプレミス型システムでも情報漏洩対策が必要
ビッグデータを収集・保管・分析する際には、情報漏洩が発生しないようにマニュアルなどを整備しましょう。
クラウドサーバーでデータを管理する場合、インターネットを経由するため、厳格なセキュリティ対策が不可欠です。近年、オンプレミス型システムからクラウド型システムに移行する企業が増加していますが、ベンダーのセキュリティ体制をチェックした上で契約してください。
オンプレミス型システムで管理している場合でも、デバイスの紛失・盗難が原因で情報が漏洩する可能性があります。そのため、「デバイスの持ち出しを禁止する」「入退室を記録する」など、適切なセキュリティ対策を講じなければいけません。
ビッグデータの活用事例
近年では多種多様な業種でビッグデータ分析に基づくサービスが実施されています。ビジネスでの活用を検討している方は、以下の事例をぜひ参考にしてください。
活用事例①リアルタイムで交通情報を提供するサービスを実施
交通の分野では、ビッグデータ(走行データ)の収集・分析によって、顧客満足度向上やコスト削減が実現されています。
具体的には、タクシーの車載器やユーザーのスマートフォンから自動車の走行軌跡情報を収集・分析し、リアルタイムで交通情報を提供するサービスが挙げられます。
ビッグデータ分析により、目的地までの到達時間が短縮されるため、顧客満足度の向上につながるでしょう。また、正確な交通情報データがあれば、燃費の削減効果が得られるため、コストの抑制にも役立ちます。
活用事例②農産物の生産効率・品質を向上させる
ビッグデータは農業の分野でも活用されており、栽培データ・土壌データ・品質データを蓄積・分析した結果、品質を一定に保つための肥料・農薬・作業量が判明しています。
農産物の品質が安定し、投入農薬量や労働量が50%以上削減された事例もあるため、ビッグデータの収集・分析をすれば生産の効率化や品質の安定化を図ることもできるでしょう。
活用事例③メンテナンスの効率化を実現
メーカーによっては、製造した機械の納品後に遠隔で稼働状況を監視するサービスを実施している場合があります。
稼働状況を監視するIoT機器などで収集したビッグデータを分析すれば、故障の前兆現象を把握可能です。前兆現象を検知した場合に予防保守を実施することで、故障発生時のメンテナンス時間が短縮・効率化されます。
ビッグデータを活用する上で注意するべきポイント
ビッグデータを収集・保管・分析する際は、システムのセキュリティ対策を充分に講じる必要があります。また、個人情報の取り扱いにも注意しなければいけません。
セキュリティ
ビッグデータには、営業秘密に該当するデータや病歴・商品購入歴など、公開したくない(されたくない)情報も含まれる場合があります。
不正アクセスによって情報が盗まれることを防ぐために、厳重なセキュリティ対策を講じなければいけません。また、システム面を整備するだけではなく、従業員のセキュリティ知識やモラルを高める情報セキュリティ教育も重要な対策です。
個人情報保護
ビッグデータに個人情報が含まれる場合は、個人情報保護法を遵守する必要があります。海外の顧客を相手にビジネスを展開している場合は、外国の法律もチェックしなければいけません。
例えば、EUでは、GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)により、IDなども個人情報として取り扱われることがあります。また、EU域外に個人情報を持ち出せないことや、規定に違反した場合に制裁金を納めなければいけない可能性があるのでご留意ください。
「データドリブン経営 EXPO」でビッグデータ関連のサービスを探そう
RX Japanが主催する展示会「Japan DX Week」の「データドリブン経営 EXPO」では、ビッグデータ関連のサービス・ソリューションが多数展示されます。
ビッグデータを取り扱っている方や、これから取り扱う予定の方は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。サービス・ソリューションを開発・製造・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
売上拡大には、ビッグデータの分析結果を踏まえた施策が不可欠
競合他社との競争に打ち勝ち、売上を拡大するためには、ビッグデータの分析結果を踏まえた施策を講じることが欠かせません。
RX Japanが主催する展示会「Japan DX Week」の「データドリブン経営 EXPO」では、ビッグデータ関連のサービス・ソリューションが多数展示されます。
ビッグデータを取り扱っている方や、これから取り扱う予定の方は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。また、サービス・ソリューションを開発・製造・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
「Japan DX Week」詳細はこちら
▶監修:大岩俊之氏
プロフィール:家電製品総合アドバイザー
理系出身の元営業マン。大学ではAI(人工知能)を学びITエンジニアとして就職し、のちに電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。