ネットワークとは?仕組みや種類、設計から運用までの流れなどを初心者向けに解説!
ITの分野で「ネットワーク」とは、ケーブルなどの通信経路を介して複数のコンピューターをつなげる技術・状態を意味します。近年、企業が事業活動を営む上で、ネットワークの設計・構築は不可欠です。
ただし、「どのような仕組みなのだろうか」「どのように設計・構築・運用するべきなのだろうか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ネットワークの仕組みや4つの種類、設計から運用までの流れなどを詳しく解説します。企業のIT部門などでネットワークの設計・構築・運用に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
ネットワークとは
ITの分野・領域で「ネットワーク(network)」とは、ケーブルなどの通信経路を介して複数のコンピューターをつなげる技術・状態を意味します。
電子メールやWebサイトの閲覧、各種SNSでのコミュニケーション、動画の視聴・配信、オンライン決済などは、ネットワークがなければ成り立ちません。
パソコンやスマートフォンだけではなく、IoT化された家電製品や工場内の機器(センサーなど)もネットワークで接続されます。近年、多くの業種・業態で、企業が事業活動を遂行し、売上を拡大するためには、ネットワークの構築・運用が不可欠です。
ネットワーク通信の仕組み
複数のコンピューターを接続して形成されるネットワークは、以下の3つの要素によって通信を成り立たせています。
①プロトコル
プロトコルとは、ネットワークの通信規約(通信を成立させるための手順・ルール)です。プロトコルが存在するため、異なるメーカーのデバイス同士でも通信が実現されます。多種多様な種類がありますが、代表的なプロトコルはTCP/IPやIPX/SPX、AppleTalkです。下記に、それぞれの概要をまとめました。
TCP/IP
- ARPANET(米国の国防総省が構築を支援した通信ネットワーク)のために開発された
- 2024年時点で主流のプロトコル体系
- 1種類ではなく、TCPやIPなど、複数のプロトコルに対する総称
IPX/SPX
- 米国ノベル社が開発したプロトコル
- 分散ファイルシステム「NetWare」で用いられる
AppleTalk
- 米国Apple社のパソコンなどで通信するために開発された
- 現在は、Apple社のデバイスでもTCP/IPを用いて通信するケースが多い
近年、インターネットを含む多くのネットワークでは、「TCP/IP」のプロトコル体系が採用されています。TCP/IPでは、UDP、SMTP、HTTPなどのプロトコルも用いられる点にご留意ください。ただし、中心的な役割を果たすプロトコルがTCPとIPであるため、「TCP/IP」と呼称されます。
②IPアドレス
IPアドレス(Internet Protocol Address)とは、データをやり取りする際にネットワーク上で送信元・送信先を識別するためにデバイスごとに付与される番号です。現実世界では「住所」に相当し、以下に示す2つの種類があります。
- グローバルIPアドレス:世界にひとつだけのアドレス
- プライベートIPアドレス:特定組織内のネットワーク内で付与されるアドレス
グローバルIPアドレスは、インターネットに接続するために割り当てられる番号です。世界中で唯一の番号であり、重複する番号は割り当てられません。
プライベートIPアドレス(ローカルIPアドレス)は、自宅・会社・学校・病院・市役所・官公庁などのネットワーク内で割り当てられる番号です。同じネットワーク内では重複する番号はありませんが、別組織のネットワーク内では同じ番号が割り当てられる場合があります。
③OSI参照モデル
OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルとは、異なるメーカーの製品間で通信できるように、多種多様なルールを規定したモデルです。ISO(国際標準化機構)によって策定され、OSIでは、ネットワークを7つの階層に分割しルールが示されています。下表に、各階層の概要をまとめました。
【階層】第7層
【名称】アプリケーション層
【概要】メールの送受信など、アプリケーションで実行したいアクションを実現するための手順が規定されている
【階層】第6層
【名称】プレゼンテーション層
【概要】送受信するデータの表現形式が定義されている(画像やストリーミングなどのデータ形式、文字コードの仕様などを含む)
【階層】第5層
【名称】セッション層
【概要】通信が開始されてから終了するまでの手順が定められている(ログインやログアウト、認証などに関しても規定)
【階層】第4層
【名称】トランスポート層
【概要】通信先に正しくデータを送信する(通信の信頼性を確保する)ためのルールが定められている
【階層】第3層
【名称】ネットワーク層
【概要】異なるネットワーク間の通信ルールが定められている(ネットワーク内のアドレス形式なども規定)
【階層】第2層
【名称】データリンク層
【概要】直接接続された機器への信号の受け渡しに関するルールが規定(伝送中のエラー検出・訂正などの仕様も含まれる)
【階層】第1層
【名称】物理層
【概要】ケーブルの特性やコネクター形状、通信速度、電気信号・光信号の変換、無線電波の形式など、物理的ルールが定められている
ネットワークを設計・構築する際には、OSI参照モデルに準拠しなければいけません。社内にネットワークに詳しい人材がいない場合は、外部専門家への相談・依頼も検討しましょう。
ネットワークの種類
私たちが日常的に使用しているネットワークにも、いくつかの種類があります。ネットワークは主に4つの種類に大別されます。
- LAN:主にひとつの建物・組織内で利用されるネットワーク
- WAN:地理的に離れた場所にある拠点をつなぐネットワーク
- イントラネット:関係者のみがアクセスできるネットワーク
- インターネット:世界中のデバイスが相互に接続するオープンなネットワーク
また、「誰がアクセスできるのか」という観点・切り口では、以下のように分類が可能です。
- プライベートネットワーク:アクセスできるユーザーを限定しているネットワーク(LANやWAN、イントラネット)
- パブリックネットワーク:誰でもアクセスできるネットワーク(インターネット)
4種類のネットワークの特長や利用される場面を、以下でご紹介します。
①LAN
LAN(Local Area Network)は、オフィスや自宅など、主にひとつの建物・組織内で構築・利用される小規模なネットワークです。物理的なケーブルで接続されているかどうかにより、以下の2種類に分類されます。
- 有線LAN:物理的なケーブルを使用してコンピューターなどのデバイスをつないだLAN
- 無線LAN:電波を用いて接続するLAN
有線LANは、通信が速く、安定しており、セキュリティ面でも比較的安全です。無線LANは、ケーブルを使わないため、デバイスを自由に持ち運べます。ただし、遮蔽物の存在や電波干渉によって通信が安定しない場合があることにご留意ください。
②WAN
WAN(Wide Area Network)とは、通信業者の回線網などを介して地理的に離れた場所にあるデバイスをつなぐネットワークです。
各拠点内では、LANを構築すれば、パソコンなどのデバイス間で通信できます。しかし、国内や海外に複数の拠点(オフィス・店舗・工場・倉庫など)がある企業の場合、拠点間で通信するためにはWANを構築しなければいけません。
③イントラネット
イントラネット(Intranet)とは、特定の組織に属するメンバー(会社の従業員、大学の学生など)のみがアクセスできるネットワークです。なお、ファイアーウォールなどを用いて、インターネットから隔離されます。
インターネットと同じプロトコル・技術(TCP/IPなど)で構築されており、セキュリティ対策を充分に講じていない場合、ネットワークに侵入される可能性があることにご留意ください。
④インターネット
インターネット(Internet)は、多数のネットワーク・デバイスが相互に接続された世界規模のオープンなネットワークです。
パソコンやスマートフォンなどを用いて世界中の拠点間でコミュニケーションが可能で、民間企業・国・市町村役場・学校など、多種多様な組織がインターネットを利用し、サービスを提供しています。
なお、インターネットを利用する際には、グローバルIPアドレスやドメインなどのインターネット資源が必要です。インターネット資源は、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)の非営利団体によって管理されています。
ネットワークの設計から運用までの流れとポイント
ネットワークには4つの種類がありますが、いずれの種類でも、構築するためにはデバイス(コンピューターなど)・ネットワーク機器・伝送媒体(ケーブルまたは電波)の3つが必要です。多種多様な製品があるため、仕様や価格を比較し、性能や予算を踏まえて選びましょう。
設計・構築する際は、利用するユーザー数や接続する拠点などを洗い出してください。ひとつの建物のみで営業している企業の場合はLANで充分な場合もあるでしょう。
ただし、クラウドサービスを利用するのであれば、インターネットに接続できる環境が不可欠です。自社の業務内容を踏まえて、ネットワークの種類を決めてください。
ネットワークを構築する際は、ネットワーク機器の取扱説明書を参照しながら接続設定を行います。なお、運用開始時には、ネットワーク管理者だけではなく、全従業員が理解できるマニュアルを作成・配布すると良いでしょう。
セキュリティ面を考慮しよう
パソコンやネットワーク機器、ケーブルなどがあれば、ネットワークを構築することは可能です。しかし、単に構築しただけでは、外部から侵入されるリスクがあります。
不正アクセスによる情報漏洩を防止するために、セキュリティ面を考慮してネットワークを設計・構築・運用しなければいけません。具体的には、従業員ごとにアクセス権限を設定したり、監視体制を整備したりすることが大切です。
自社で設計・構築・運用できない場合は外部サービスを利用しよう
ネットワークの設計から運用までの流れとポイントをご紹介しましたが、業種・業態・企業規模によっては、社内にITに詳しい人材がいないケースがあるかもしれません。
その場合は、ネットワークの設計・構築・運用を実施してくれる外部サービスを活用しましょう。充分な知識・スキルを有しないままネットワークを設計・構築・運用すると、不正アクセスされて個人情報や企業秘密などを盗まれる可能性があります。
また、ITに詳しい人材がいる場合も、外部業者に任せることで、業務の効率化が図れ、自社の従業員は利益に直接影響するコア業務に集中することができます。
ネットワーク設計・構築・運用サービスの選び方
まず、自社と同じ業種にネットワークを設計・構築・運用した実績があるかどうかを確認しましょう。業種ごとにノウハウや規模感が異なることにご留意ください。そして、設計・構築や運用にかかる費用も、複数の業者から見積もりを出してもらって比較しましょう。
費用だけではなく、土日祝日も対応しているかどうか、従業員に対する教育・研修を実施してくれるかなど、サービスの内容も比較検討した上で選定してください。
ネットワーク設計・構築に役立つサービスを探しているなら「IoT・エッジコンピューティング EXPO」へ
RX Japanが主催する展示会「Japan IT Week」の「IoT・エッジコンピューティング EXPO」では、ネットワークの設計・構築に役立つ機器・サービスが多数展示されます。
ネットワークの設計・構築を担当している方は、ご来場の上、最新の情報を収集しましょう。また、機器・サービスを開発・製造・販売している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
個人情報などを守るために、安全なネットワークの設計・構築を!
多くの業種で、ネットワークなしではビジネスを営むことが困難な時代が到来しました。自社に適したネットワークを設計・構築・運用し、業務効率化や生産性向上を実現しましょう。社内にITに詳しい人材がいない場合は、外部業者に依頼もご検討ください。
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▶監修:大岩俊之氏
プロフィール:家電製品総合アドバイザー
理系出身の元営業マン。大学ではAI(人工知能)を学びITエンジニアとして就職し、のちに電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。