データセンターとは?クラウドサービスとの違いや利用目的・メリットを解説!
システムを運用したり、データを取り扱ったりする場合、様々な方法を選択可能です。具体的には、自社の構内に機器を設置する方法の他に、クラウドサービスやデータセンターを利用する方法もあります。データセンターには、クラウドサービスでは得られないメリットがあります。
本記事では、データセンターの定義や、クラウドサービスとの違いを詳しく解説します。データセンターを利用する目的やメリットも紹介するので、データセンターの利用を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
データセンターの定義
データセンターとクラウドサービスの違い
ハードウェアを購入・管理する主体
カスタマイズ性
データセンターを利用する目的
他社の事情に左右されることなく、サービスを顧客に提供する
個人情報など、他社に管理を任せられないデータを取り扱う
データセンターを利用するメリット
専用回線により、大容量・高速通信が可能
システムを自由に構成できる(特殊な機器も利用可能)
データセンターとシステム運用の関連性
非常用発電機やUPSがあり、24時間365日の運用が可能
大規模災害が発生しても、サービスの提供を継続しやすい
データセンターの定義
総務省の「平成29年版情報通信白書」によると、データセンターとはコンピューターやデータ通信装置などを設置・運用することに特化した施設の総称を指します。
データセンターによって提供されるサービスは、以下の2種類に大別可能です。
- ハウジングサービス:データセンター内のサーバーを設置するラックおよび関連設備(通信回線・電源など)を貸し出すサービス(機器の運用・保守は原則として自社で実施)
- ホスティングサービス:スペースだけではなく、ネットワーク機器も貸し出すサービス
なお、インターネット接続に特化した施設は、「インターネットデータセンター (internet Data Center、iDC)」と呼ばれる場合があります。
データセンターとクラウドサービスの違い
データセンターでは物理的なスペースや機器が貸し出されるのに対し、クラウドサービスではインターネットを介して仮想的に利用環境や機能が提供されます。
ハードウェアを購入・管理する主体
データセンター(ハウジングサービス)の場合、スペースのみを借りる仕組みであり、利用者がハードウェアを購入・設置・管理します。ホスティングの場合は、ハードウェアもレンタル可能です。ただし、ハードウェアの管理・運用は、自社で実施する必要があります。
クラウドサービスの場合、ベンダーがハードウェアを管理しており、仮想的に機能を提供する仕組みです。そのため、ユーザー側で管理する手間がかかりません。
カスタマイズ性
データセンター(ハウジング)の場合、自社に適した設計・運用が可能で、自由にハードウェア・ソフトウェアを選定できます。ホスティングの場合、ハードウェアに関してはレンタルできる種類が限られますが、ソフトウェアは自由に選択できます。
それに対し、クラウドサービスの場合、ベンダーが提供するハードウェア・ソフトウェアを利用するしかありません。カスタマイズ性という点では、データセンターのほうが優れています。
データセンターを利用する目的
データセンターを利用すれば、自社の構内でハードウェアを管理せずに済み、室温の調整や入退室管理・防火措置・防犯対策などを施設管理者に任せられます。耐震・免震構造の建物が多く、巨大地震が発生しても耐えられる可能性が高いでしょう。
クラウドサービスを利用する場合も、上記の目的は達成可能です。ただし、以下に示す目的・事情がある場合は、クラウドサービスではなく、データセンターの利用をご検討ください。
- 他社の事情に左右されることなく、サービスを顧客に提供する
- 個人情報など、他社に管理を任せられないデータを取り扱う
それぞれに関して詳しく説明します。
他社の事情に左右されることなく、サービスを顧客に提供する
クラウドサービスを利用する場合、ベンダーの事情によって、システムの運用を停止せざるを得ない状況に直面する可能性があります。クラウドサービス運営事業者の従業員も人間である以上、ヒューマンエラーによって設定ミスが起こる確率はゼロではありません。
金融など、ミッションクリティカルな(中断すると大きな損害を被るおそれがある)サービスを提供している事業者は注意が必要です。
個人情報など、他社に管理を任せられないデータを取り扱う
事業内容によっては、個人情報や企業秘密など、他社に管理を任せられない機微情報を取り扱うケースもあるでしょう。その場合は、クラウドサービスの利用を避け、データセンターを利用して自社でハードウェアを管理することも検討するべきです。
また、「クラウドサービスで保存していたデータが消失する」という事故が発生する確率もゼロではありません。過去にデータが消失した事例が実際に発生しているため、データセンターを利用することで、システムトラブルの影響を受けないようにすることが必要です
データセンターを利用するメリット
データセンターなら、クラウドサービスでは得られないメリットを享受できます。自社で機器を管理する手間はかかりますが、利用を検討してはいかがでしょうか。
専用回線により、大容量・高速通信が可能
多くのクラウドサービスでは、「ベストエフォート型」による運用が実施されています。ベストエフォート型とは、回線事業者が提示した最大通信速度を上限として、最大限に努力した通信速度でインターネットに接続する方式です。そのため、回線の利用状況によっては、通信のパフォーマンスが低下する可能性があります。
データセンターの場合、拠点間を専用回線で結んで、常に大容量・高速な通信を維持可能です。
システムを自由に構成できる(特殊な機器も利用可能)
クラウドサービスの場合、ベンダーが提供するハードウェア・ソフトウェアを利用するしかありません。それに対し、データセンターでは、利用者側でシステム(ハードウェア・ソフトウェア)を自由に構成できます。
特定の用途・機能に特化した機器(特注で製造してもらったハードウェア)を使用している場合は、データセンターを利用するべきです。クラウドサービスでは、同等の性能を実現できない可能性があります。
データセンターとシステム運用の関連性
停電や大規模災害が発生しても、データセンターを利用していれば事業・サービスを継続可能です。以下、データセンターとシステム運用の関連性を詳しく説明します。
非常用発電機やUPSがあり、24時間365日の運用が可能
データセンターには、非常用発電機やUPSがあります。UPS(Uninterruptible Power Systems/Supply)とは、突発的・計画的な瞬時電圧降下(瞬停)や比較的短時間の停電から、通信機器・データを守るための装置です。日本語では、「無停電電源装置」と訳されます。
これらの装置により、停電が発生しても、ハードウェアの稼働を停止せずに済む可能性が高く、24時間365日システムを稼働し続けられます。
大規模災害が発生しても、サービスの提供を継続しやすい
オンプレミス型システムの場合、大規模災害(巨大地震や津波など)が発生して拠点が壊滅すると、サービスの提供が困難な状況に陥るかもしれません。
データセンターやクラウドサービスを利用すれば、災害が発生してもシステムの稼働を停止せずに済む可能性が高いでしょう。理由は、頑丈な建物内にハードウェアが格納されていたり、別拠点でバックアップされていたりするためです。
なお、クラウドサービスの場合、万が一、システムが停止に追い込まれた場合、ベンダーの復旧対応が完了するまで待つしかありません。しかし、データセンターの場合、自社のエンジニアが駆けつけて迅速に復旧対応を実施できます。
データセンターは安全・安心なシステム運用に役立つ
ATMやクレジットカード、携帯電話、スマートフォン決済サービス、オンラインゲームなど、24時間365日稼働するシステム・サービスが増加しています。これらのシステム・サービスを自社の建物内に設置したハードウェアで管理・運営する場合、停電や自然災害が発生した際に、稼働を停止せざるを得ない状況に陥るかもしれません。
近年、日本政府や自治体が、企業に対して「BCP」の策定を呼びかけています。BCP(Business Continuity Plan)とは、大規模自然災害(大地震・津波など)が発生して拠点が壊滅した状況でも、事業を中断せずに継続するための計画です。
上述したように、データセンターを利用すれば、大規模自然災害発生時でもシステム稼働を停止せずに済む可能性が高いでしょう。有事に備えるために、データセンターの利用を検討してはいかがでしょうか。自社の構内でオンプレミス型システムを運用しつつ、地理的に離れた場所にあるデータセンターで「バックアップ」を実施することも選択肢のひとつです。
JDCCの「データセンターファシリティスタンダード」では、データセンターの信頼性は、ティア1からティア4までの4段階に区分されています。ティア1の稼働信頼性は99.67%以上、ティア2は99.75%以上、ティア3は99.98%以上、ティア4は99.99%以上です。安心・安全なシステム稼働を求める場合は、目安としてティア3以上のデータセンターを利用しましょう。
「データセンターEXPO」でデータセンター関連サービスを探そう
RX Japanが主催する展示会「Japan IT Week」の「データセンターEXPO」では、データセンターに関連したサービス・ソリューションが多数展示されます。
データセンターの利用をお考えの場合は、ご来場の上、最新の情報を収集しましょう。データセンターに関連したサービス・ソリューションを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
データセンターを利用すれば、自社でハードウェアの管理が可能
自社の構内でオンプレミス型システムを運用する場合、大規模災害などが発生すると、稼働を停止せざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。
クラウドサービスの場合、自社で管理せずに済みますが、ベンダーが提供するハードウェア・ソフトウェアを利用するしかありません。自社に適したハードウェア・ソフトウェアを用いて、24時間365日の稼働を実現するためには、データセンターを利用することも選択肢のひとつです。
RX Japanが主催する展示会「Japan IT Week」の「データセンターEXPO」では、データセンターに関連したサービス・ソリューションが多数展示されます。データセンターの利用をお考えの場合は、ご来場の上、最新の情報を収集しましょう。データセンターに関連したサービス・ソリューションを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
▶監修:大岩俊之氏
プロフィール:家電製品総合アドバイザー
理系出身の元営業マン。大学ではAI(人工知能)を学びITエンジニアとして就職し、のちに電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。