画像認識とは?技術の種類や活用事例、今後の課題などをわかりやすく解説

画像認識は、大量の画像データをAIに学習させることで、新しい画像データの内容を自動で判別する技術です。

製造業や医療、物流など様々な分野で導入が進み、業務の効率化や精度向上に大きく貢献しています。

しかし、画像認識の精度やプライバシー、データ収集のコストなどの課題も多くあるので、導入や活用を検討している企業の方は知っておくべきです。

本記事では、画像認識の種類や課題、具体的な活用事例などを解説します。

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画像認識とは?

画像認識とは、機械やコンピュータが画像データから対象物を特定し、内容を理解する技術です。

雑多な情報から一定の規則や意味を持つ対象を識別するパターン認識を用いており、以下の仕組みで画像を判別します。

  1. 認識させたい画像を入力する
  2. AIが画像を認識しやすく処理する
  3. AIが画像の特徴を抽出する
  4. AIが特徴を比較して画像を識別する
  5. AIが画像を何か認識できる

人間がはじめて見る動物を「知識や経験」によって犬か猫か見分けるように、AIも学んで見分けをつける技術です。


「画像処理」との違い

画像認識は機械やコンピュータが画像から対象物を認識する技術です。

一方、画像処理は、画像データ自体を分類、加工、情報抽出などを行う技術をさします。

  • 分類…画像データに映っているものが何かを分類する
  • 加工…画像の色や明るさの補正やノイズの除去、エッジの強調などを行って、AIが認識しやすい形にする
  • 情報抽出…画像の被写体と背景の境界線を認識させ、物体が画像のどの部分にあるかを検出する

つまり、画像自体を処理、加工などするための工程を画像処理と呼び、画像認識の前段階として行う流れが一般的です。

なお、画像処理を施さないと、AIは画像から適切な情報を抽出できないため、画像認識の精度を左右する重要な工程になります。


画像認識の種類

画像認識には様々な種類があり、目的や用途によって活用される技術も異なります。画像認識の主な種類は以下のとおりです。

  • 物体認識
  • 物体検出
  • 画像分類
  • 異常検知
  • 顔認識
  • 文字認識(OCR)
  • 画像キャプション生成

以下で詳しく解説します。


物体認識

物体認識とは、画像や動画内に映る物体を識別し、何が映っているかを特定する技術です。

画像から様々な物体を識別する「一般物体認識」と、画像から特定の対象を識別する「特定物体認識」の2種類あります。

例えば、画像データに写っている動物が犬かどうか識別できる技術が「一般物体認識」、犬の犬種が柴犬なのか、ゴールデンレトリバーなのかを識別できる技術が「特定物体認識」です。

物体認識は画像認識の主要な技術になります。


物体検出

物体検出とは、画像データに存在する物体を特定し、位置情報まで同時に検出する技術です。

物体認識は「犬が写っているかどうか」「犬種は柴犬なのかどうか」を識別するのに対して、物体検出は「犬が画像内のどの位置にいるのか」まで把握します。

物体の識別と空間情報の組み合わせによって成り立ち、物体の種類と場所の両方を可視化する技術です。

例えば、防犯カメラが特定の場所にいる不審者の位置をリアルタイムで知らせたり、自動運転車が歩行者や障害物の位置を特定し、車両制御に反映させたりする際に役立ちます。


画像分類

画像分類とは、画像に写っている物体が何であるかを特定し、カテゴリごとに分類する技術です。

あらかじめ正解とされる大量の画像データをAIに学習させ、AIが新たに入力された画像に対して「どのカテゴリに属するか」を判断します。

例えば、あらかじめ正しい商品や製品の画像データをAIに学習させておき、新しい商品や製品が完成した際に正解のデータと照らし合わせ特徴を満たしているか識別させ、良品か不良品かの判断を下すことが可能です。

製造ラインでの検品作業に応用されており、人の目で確認する作業を自動化し効率化を実現します。


異常検知

異常検知とは、過去の正常な画像データと比較し、異なる特徴を持つ部分を検出する技術です。

大量の正常データをAIに学習させ、共通するパターンを把握させます。次に、新たに入力された画像データから、共通するパターンから逸脱した部分を「異常」として検知する仕組みです。

例えば、製造ラインでの検品作業で傷や変色、不具合のある製品を即座に特定する際に役立ちます。

また、工場の機械が通常の動作パターンと異なる挙動が発生した場合にも異常を検出し、早期に対処できる技術です。

従来の目視検査や人間の感覚に頼る作業よりも高い精度とスピードを実現するため、製造業やインフラ設備の保守管理など、様々な分野で導入が進んでいます。


顔認識

顔認識とは、顔の画像から目や鼻、口などの目立つ特徴を抽出し、個々の人物を識別する技術です。

顔の構造的な特徴や配置に基づき、年齢、性別、表情などを分析し、カメラに映った人物が誰であるかを特定し、表情から感情の推測などができます。

顔認識は、データベースに登録された顔写真とカメラで撮影した画像や映像を照合し、一致するかを判定する顔認証に用いられています。スマートフォンの顔認証や空港での出入国管理、オフィスの入退室管理などで活用されています。


文字認識(OCR)

文字認識(OCR:Optical Character Recognition/Reader)とは、手書きや印刷された文字をデジタルデータとして識別する技術です。

紙媒体に記載された文字や看板に表示された文字をスキャンし、コンピュータやスマートフォンが認識できる形に変換します。

帳票や名刺の情報をデータベースに自動で登録し、書類のデジタル化などの場面でも役立つ技術です。

また、最近では文字認識が翻訳機能と組み合わされ、撮影した文字データをリアルタイムで翻訳するサービスも登場しています。


画像キャプション生成

画像キャプション生成とは、画像に映る状況や内容をAIが判別し、自然な言語で説明文として出力する技術です。

例えば、物体の位置関係や背景情報を分析し、「犬が草原を走っている」「パーティで人々が食事を楽しんでいる」などの具体的なキャプションを生成します。

音声読み上げ機能と連携して、視覚障害者に対して投稿された写真の内容を伝えることも可能です。

AIの進化によって、より高度な説明生成が期待されている技術です。


画像認識を活用した事例

画像認識の技術はバーコードから始まったものですが、近年では、顔認証・文字認証・異常検出などの用途で、すでに様々な分野で活用が進んでいます。画像認識が実際にどのように活用されているのか、事例を紹介します。


バーコードやQRコードなどのコード

画像認識の歴史は、1940年代に発明されたバーコードが始まりとされています。

バーコードは、バーとスペースの組み合わせによって数字や文字を表現し、専用スキャナーで情報を読み取る技術です。

現在では、QRコードやARマーカー、Data Matrix(データマトリックス)などの2次元コードをカメラで読み取ると、画像内の情報を認識できます。具体的には、以下のケースで活用されています。

  • スーパーやコンビニのレジ…商品のバーコードを読み取り、価格や商品情報を自動で認識する
  • 公共料金の支払い…請求書のQRコードやバーコードをスマートフォンでスキャンし、簡単に支払いが完了する
  • 工場や倉庫の仕分け…製品や部品に付けられたコードをスキャンし、仕分けや在庫管理を効率化できる

コードは情報の正確な管理と業務効率化を支える重要な役割を果たしており、今後も様々な分野での拡大が期待されています。

※QRコードの商標はデンソーウェーブの登録商標です


顔認証システム

顔認証システムは、画像認識の一種である顔認識を活用した代表的な事例で、セキュリティ分野やアクセス管理で広く利用されています。

目や鼻、口の位置関係や顔の輪郭などをAIが解析し、事前に登録された顔データとのわずかな違いも見逃さない精密な認証が可能です。

また、近年では、マスクやサングラスで一部の顔が隠れていても認証可能な高度なシステムが登場しています。

スマートフォンのロック解除や空港やオフィスビルの入退室管理など、特定の人物の判定が必要な場面で大きな役割を果たしています。


外観検査

外観検査は、製品や部品の表面に生じる傷、汚れ、ひび割れなどの欠陥をチェックする工程です。

従来は人の目による検査が主流でしたが、画像認識を用いれば、AIが正しい状態と異常状態を正確に判断できます。

細かな傷や汚れの付着などの不良箇所を自動で特定できるため、人による見落としのリスクを低減し、検査のスピードや精度の大幅な向上が可能です。

外観検査の自動化は、製品品質の向上やコスト削減に大きく寄与するため、多くの工場で導入が進んでいます。


医用画像診断

放射線科医が行う業務のひとつに画像診断があり、様々な診療科の医師から依頼を受けます。

放射線科医が撮影した画像から病変や異常を読み取り、診断のためのレポートを作成し、各医師がレポートをもとに適切な治療方針を決定するプロセスです。

正確な診断と迅速な治療に直結するプロセスのため、医療の現場では欠かせず、AI技術の活用により医用画像診断はさらに進化しています。

例えば、病気の画像データを大量に学習させれば、AIはがんや骨折、脳卒中などの病変を高精度で検出し、見落としを防ぐことが可能です。

早期発見が重要な疾患の診断でAIは重要な役割を果たしており、今後の医療の発展に大きな影響を与えると考えられます。


画像内の文字翻訳

最新のスマートフォンには、カメラで読み込んだ文章をリアルタイムで翻訳する機能やサービスが提供されています。

画像認識の文字認識(OCR)を用いており、カメラで撮影した画像内の文字を瞬時に抽出し、選択した言語に翻訳して表示します。

例えば、海外旅行中に現地のレストランでメニューを撮影すれば、すぐに料理の内容を理解できるため、言語に自信がない旅行者に便利です。

さらに、印刷物や看板の翻訳にも対応しているため、日常生活やビジネスシーンで活用できます。


画像認識の課題

画像認識は日常生活やビジネスシーンなど、様々な分野で活用されている技術です。

最近ではディープラーニング技術の進歩によって、より正確な画像認識が可能となり、活用分野や可能性はさらに広がると考えられます。

一方で、画像認識には以下の課題が指摘されているので注意しましょう。

  • 学習データとして大量の画像が必要になる
  • 完璧な精度は実現しない
  • 根拠が不明瞭
  • 倫理面やプライバシーの問題
  • 国や法律によって制限される可能性がある

以下で詳しく解説します。


学習データとして大量の画像が必要になる

画像認識の精度を高めるには、膨大な量の学習データが必要です。

 

AIは学習によってパターンを認識するため、異なる角度や大きさ、照明、背景など、多様な条件で撮影された画像を学習させる必要があります。データに偏りがないほど、現実の環境下での認識精度が向上する仕組みです。

しかし、適切な画像データを大量に収集しラベリングしてAIに学習させるには、膨大なコストと労力がかかります。

自社で画像認識に取り組む場合は、質の高い画像データを確保する必要があります。


完璧な精度は実現しない

画像認識では、大量の画像データを用意しても完璧な精度は実現しません。

AIが学習した画像データに基づいて判断するため、誤認識や検出漏れがゼロにならず、AIが出す答えが人間の期待する結果とは限らない点に注意しましょう。

また、学習させる画像データに偏りがあるとAIの判断にも偏りが生じるリスクがあります。

画像認識の精度向上には多様な画像データと継続的な改善、人間による最終確認やAIの結果を補完する仕組みなどが必要です。


根拠が不明瞭

AIのアルゴリズムは複雑で、その判断の根拠が不透明な場合があります。

例えば、人間が犬を犬と判断する際は、耳の形や体つき、毛並みなどの特徴を基に、「なぜ犬だと判断したのか」を言語化し説明が可能です。

しかし、AIによる画像認識の場合、結論に至るプロセスが複雑なアルゴリズムのなかに隠れ、人間が判断理由を直感的に理解するのは難しい場合があります。

いわゆるAIの「ブラックボックス問題」で、AIが判断を下した理由を明確にできないケースがあるため、誤認識が発生した際の原因の追究が難しいです。

医療やセキュリティなど高い信頼性が求められる分野では、AIの判断根拠が明らかにできず、リスクにつながる可能性がある点に注意しましょう。


倫理面やプライバシーの問題

画像認識の発展に伴い、大量の画像データを収集する際に、個人情報が含まれるケースが増え、倫理面やプライバシーの問題が大きな課題となっています。

企業が画像認識技術を導入する際は、利用目的の明確化やデータ収集に際したプライバシーの配慮、取得したデータの暗号化、管理体制の整備などが不可欠です。


国や法律によって制限される可能性がある

AIや画像認識技術の使用は、国や地域ごとの法律や規制によって制限される可能性があります。

実際に、2019年にサンフランシスコ市が全米ではじめて、顔認証技術の公共機関での使用を禁止する条例を可決しました。

画像認識は個人情報を取り扱う可能性が高いため、国や自治体の方針や規制などによって影響を受ける可能性があります。

企業が画像認識技術を活用する際には、最新の規制を把握し、コンプライアンスに則った運用が必要です。


画像認識の情報収集を行うなら「現場DX EXPO」へ

RX Japanが主催する展示会「Japan DX Week」の「現場DX EXPO」では、画像認識に関連した技術・製品・サービスが多数展示されます。

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下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。


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【構成展示会】
AI・業務自動化展、社内業務DX EXPO、
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画像認識は業務の効率化に役立つので活用してみよう

画像認識は、製造や物流、医療、セキュリティなど多様な分野で業務の効率化に貢献する技術です。従来の手作業による検査や情報処理が自動化され、業務のスピードと精度が飛躍的に向上する可能性があります。

業務効率を向上させ売上増を実現するために、画像認識システムを導入してはいかがでしょうか。

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▶監修:青井真吾 氏

プロフィール:大学卒業後はIT企業に入社。システムエンジニアとして大手企業向けのERPシステム開発を経験。その後独立し、人材派遣、不動産、自動車、ファッション、エネルギーなど多くの業界でDX推進などのITプロジェクトに従事。現在はAOIS Consulting株式会社を設立し、エンタープライズシステムの開発・導入を支援するITコンサルティングサービスを展開している。

HP: https://aoisconsulting.com/



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