ベンチマークとは?調べるメリットや注意点、代表的なテストなどを解説
ベンチマークはパソコンやソフトウェアなどの性能を数値化する指標で、世代やメーカーが異なる機器でも性能を比較できます。高度なIT業務でパソコンを導入する際は、ベンチマークを比較して目的にあった製品を選ぶと良いでしょう。
ただし、ベンチマークは様々な種類があり、用途に合った角度からベンチマークを比較して検討する必要があります。
本記事では、ベンチマークの意味や調べるメリット、比較する際の注意点、代表的なベンチマークテストなどを解説します。
ベンチマークとは?
本来ベンチマークとは、測量を行う際に、高低差や建築物の高さを測る際の基準点をさす用語です。
業界によって意味が異なり、IT業界ではパソコンのスペックやソフトウェアの動作速度などを測定する指標として用いられます。
例えば、あるプログラムを実行して出た結果をベンチマークスコアと呼び、スコア同士を比較する行為をベンチマークテストと呼びます。
ベンチマークをもとに、パソコンの世代間の比較や、同世代の別製品との比較が可能です。
ベンチマークを調べるメリット
パソコンを選ぶ際。CPUやメモリなどのパーツの情報が簡単に理解できると便利です。
しかし、パーツの情報を理解するためにはいくつもの専門用語を理解する必要があり、時間と手間がかかります。
ベンチマークはパソコンのスペックやソフトウェアの動作速度などを測定し、ベンチマークスコアの結果から、以下の性能を簡単に比較できます。
- パソコンの性能や動作速度を評価できる
- 複数のパソコンの処理性能を比較できる
- アプリやソフトウェアが利用可能か確認できる
パソコンの性能や動作速度を評価できる
パソコンの性能や動作速度は、自分のニーズに合ったパソコンを知るために重要です。
現在のパソコンは搭載されている主要パーツの性能や製品仕様が記載されています。知識がある人が見れば、パソコンのおおよその性能を理解できますが、知識がないと情報を見ただけではわかりません。
ベンチマークテストで、パソコンの性能や動作速度などを数値化することで、専門的な知識がなくても、ベンチマークスコアを確認すれば性能の良し悪しを理解できるでしょう。
複数のパソコンの処理性能を比較できる
ベンチマークスコアは処理性能を数値化した指標なので、複数のパソコンを比較する際にも役立ちます。
例えば、パソコンの処理で中心的な役割を担っているCPUは複数のメーカーから様々な世代の商品が販売されており、特徴が異なるため比較は難しいです。
しかし、同じベンチマークテストを行えば、CPUの処理性能が数値で比較できるので、性能の高いCPUやパソコンを選びやすくなります。
処理性能の高いパソコンを導入すれば、3Dモデリングやレンダリング、動画編集、機械学習のモデル訓練などの高度な業務が可能です。
アプリやソフトウェアが利用可能か確認できる
パソコンのスペックによってはアプリやソフトウェアが利用できない、あるいは利用できても満足なパフォーマンスが発揮できない場合があります。
アプリやソフトウェアの公式サイトでは、ベンチマークスコアが公表されているケースが多く、使っているパソコンのベンチマークスコアと比較すれば、利用できるアプリやソフトウェアの判断ができます。
スコアが低くて利用できない場合は、ベンチマークスコアを満たしているパソコンへの買い替えを検討しましょう。
ベンチマークを比較する際の注意点
ベンチマークはパソコンの性能を数値化するための指標ですが、ベンチマークは様々な種類があり、テスト環境によっても数値が異なるため注意が必要です。
- ベンチマークには様々な種類がある
- 前提条件によってはベンチマークスコアが影響を受ける
- ベンチマークを調べるテストは複数ある
以下で詳しく解説します
ベンチマークには様々な種類がある
ベンチマークはパソコンやソフトウェアの性能を比較できる指標ですが、単一ではありません。
例えば、パソコンの性能を測るベンチマークには、以下の種類があります。
- パソコン全体の性能
- CPUの性能
- グラフィックスカードの性能
- HDDやSSDなどのストレージ
- 外付けHDDやSSD、USBなどの外部ストレージ
- ビジネスで使うソフトウェアの快適性
- パソコンで実行する処理(エンコード)の速度
ベンチマークには、パソコン全体の性能を示すものがあれば、パーツごとの性能や特定のソフトウェアや作業時の快適さを示すものなど、様々な種類があります。
業務の目的にあったパソコンを導入するには、用途に合った角度からベンチマークを比較して検討しましょう。
前提条件によってはベンチマークスコアが影響を受ける
ベンチマークスコアはテストの方法やパーツの組み合わせ、最適化などの条件によって左右されます。
前提条件が異なる場合、ベンチマークスコアの数値の差が、パソコンの性能差や優劣を判断する基準とはいい切れないので注意が必要です。
1種類のベンチマークスコアだけを参考にするのではなく、複数のベンチマークテストの結果から多角的に性能を比較してください。
ベンチマークを調べるテストは複数ある
ベンチマークを調べる方法は、単位時間あたりの処理量を計測する方式と、テスト用のプログラムの処理時間を計測する方式の2種類です。
単位時間あたりの処理量を計測する方式は、定められた時間内に処理できる命令数やリクエスト数を基準に評価するため、実際の業務で利用する際のシステムの負荷耐性や安定性を評価できます。
ただし、計測時間が限られているので、速さではなく処理できる量の多さが重視され、効率性より処理能力全体の評価になりやすい傾向があります。
一方、テスト用のプログラムの処理時間を計測する方式では、処理が完了するまでの時間を基準に評価するため、特定の処理での性能を把握できます。
ただし、システム全体の負荷耐性を調べるには不向きで、実際の運用環境での評価とはつながらない可能性があるので注意が必要です。
ベンチマークを調べる代表的なテスト
ベンチマークはスペックを調べるのに役立ちますが、前提条件によってスコアが影響を受けるため、複数のテストを比較するべきです。
ベンチマークテストごとに特徴が異なり、端末の性能を計測できるテストがあれば、特定のシステムのスコアを計測できるテストもあります。
以下、ベンチマークを調べる代表的なテスト3つを参考に、業務で必要な用途にあわせてベンチマークを確認しましょう。
SPEC
SPECはStandard Performance Evaluation Corporationの略称で、パソコンやサーバーなどのIT分野の性能評価を目的としたベンチマークを提供している組織です。
様々なベンチマークテストを公表しており、パソコンやソフトウェアなどの性能を客観的に評価し、比較できます。
例えば、「SPEC CPU 2017」は、計算処理性能のシステム間比較が可能なベンチマークで、メーカーや世代が異なる機器の総合的な評価や、実際の業務での負荷への耐久性などの計測が可能です。
また、研究機関で使用される機器の仕様要件に、SPECのベンチマークスコアが求められるケースもあり、信頼性の高いベンチマークテストとされています。
TPC
TPCはTransaction Processing Performance Councilの略称で、システムの処理性能評価に用いられるベンチマークを提供する組織です。
複数のベンチマークテストを提供しており、データベース管理システムやハードウェアのパフォーマンスを客観的に評価し、製品の選定や最適化の参考になります。
また、TPCのベンチマークスコアは公表されたデータとして企業やエンジニアが参照でき、パソコンやソフトウェアなどの有力メーカーやベンダーが利用しているので信頼性が高いです。
PassMark
PassMark とは、PassMark Software社が提供するベンチマークを測定するためのソフトウェアやサービスの総称です。
認知度が高く世界中で広く使われており、大量のベンチマークスコアを無料で公開しているので、CPUをはじめとする様々なパーツの性能を判断するのに役立ちます。
また、有料版の総合ベンチマークソフト「PerformanceTest」をインストールすれば、使用しているパソコンのCPUやGPU、メモリ、ストレージなどの性能を測定できるので便利です。
最新のベンチマークを知りたいなら「ソフトウェア&アプリ開発展」へ
IT業界に欠かせない、パソコンやソフトウェアの処理性能を評価するベンチマークの知識は、今やソフトウェア開発やシステム運用において重要な要素となっています。
「Japan IT Week」の「ソフトウェア&アプリ開発展」には、IT業界の最前線で活躍するエンジニアや開発者が集い、最新の技術情報やノウハウが紹介されます。自社のシステムやアプリの性能をさらに高めたいとお考えの方には、有益なヒントが得られる絶好の機会です。
また、IT業界の方々が多数来場するこの展示会では、自社の製品やサービスを広くアピールするチャンスが広がります。技術に関心のある来場者へ向けて情報発信を検討している企業の皆様、ぜひ「ソフトウェア&アプリ開発展」への出展をご検討ください。
下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。
業務でパソコンを導入するならベンチマークを調べてみよう
ベンチマークは異なる世代やメーカーのパソコンやソフトウェアなどの性能を比較できる指標です。
高度なIT業務には高性能なパソコンが必要になるため、パソコンを導入する前にベンチマークを調べて確認しましょう。
ベンチマークのサービスやツールを詳しく知りたい、あるいは相談したい企業の責任者さまは「Japan IT Week」内の「ソフトウェア&アプリ開発 展」で情報収集してはいかがでしょうか。
また、ベンチマークのサービスやツールを提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。
「Japan IT Week」詳細はこちら
▶監修:大岩俊之氏
プロフィール:家電製品総合アドバイザー
理系出身の元営業マン。大学ではAI(人工知能)を学びITエンジニアとして就職し、のちに電子部品メーカー・半導体商社・パソコンメーカーなどで、自動車部品メーカーや家電メーカー向けの法人営業を経験。その後、セミナー講師として活動する傍ら、家電製品の裏事情を知る家電コンサルタントとして活動開始。TBSラヴィット!や東海地区のテレビ番組に「家電の達人」として出演した経験を持つ。現在は、家電製品アドバイザー資格試験のeラーニング講師も務める。