DXとは?注目されている理由や進め方、注意点、成功させるためのポイントなどを解説

DXは、企業の競争力を高めるために欠かせない取り組みです。業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出を通じて、市場での優位性の確立が期待されます。

しかし、DXとは具体的にどのような取り組みを指すのか、どのように推進していけばよいのかわからない方もいるのではないでしょうか。

本記事では、DXが注目されている理由や進め方、注意点、成功させるためのポイントなどを解説します。

日本最大級のDX総合展

【構成展示会】
AI・業務自動化展、社内業務DX EXPO、
データドリブン経営 EXPO、現場DX EXPO


DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデル、組織文化などを大きく変革する取り組みです。

経済産業省が公表した「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では、「抽象的かつ世のなか全般の大きな動きを示す考え方から進めて、企業が取り組むべきもの」と示しており、DXは以下のメリットが得られる方法と考えられます

  • 業務の変革
  • 既存ビジネスモデルの進化
  • 新規ビジネスモデルの創出

DXによって業務の効率化やコスト削減が実現すれば、迅速で的確な意思決定が可能となり、既存ビジネスモデルの持続的な成長や、顧客データの活用による新規ビジネスモデルの創出などが期待できます。

DXとは、単なる技術導入にとどまらず、企業の競争力向上にも役立つ取り組みです。

※出典:総務省「令和3年版 情報通信白書|デジタル・トランスフォーメーションの定義」


DXとIT化の違い

IT化は、主に業務プロセスの効率化を目的とし、対象は社内業務や社内ユーザーが中心です。

一方、DXはビジネスモデルや事業全体の変革、新たな価値の創造を目的とし、社内だけでなく顧客や取引先など社外関係者も含まれます。

DXとIT化の具体的な違いを以下にまとめました。

DX

【目的】

  • ビジネスモデルの変革
  • 新規事業の創出

【対象範囲】

  • 社内や顧客、取引先など社外も含む

【得られる効果】

  • 競争優位性の強化
  • 顧客体験の向上

【活用事例】

  • データ活用、AI、IoT、クラウドなどの総合活用

IT化

【目的】

  • 業務の効率化
  • コスト削減

【対象範囲】

  • 社内業務が中心

【得られる効果】

  • 日常業務の効率向上
  • 自動化

【活用事例】

  • 既存の業務システムやツールの導入

DXとIT化は、デジタル技術を活用する点では共通していますが、目的や範囲が異なります。

IT化は短期的な効率改善に向いていますが、DXは企業全体で中長期的な変革を目指すため、戦略的なアプローチが必要です。

そのため、DXを進める際には、経営陣の強力なリーダーシップと、全社的な意識改革が求められます。


DXが注目されている理由

DXはデジタル技術を活用して、業務プロセス、ビジネスモデル、組織文化を大きく変革する取り組みです。

2018年に経済産業省が発表した資料で登場した言葉で、現在では以下の理由により注目されています。

  • 「2025年の崖」問題への対策が迫られている
  • 市場競争力を高めるのに役立つ
  • 消費者ニーズに対応できる
  • BCPを推進できる

以下で詳しく解説します。


「2025年の崖」問題への対策が迫られている

「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」で指摘された問題です

1980年代以降のIT化により、企業はパソコンや業務システムを導入してきましたが、多くの企業で古いシステム(レガシーシステム)がブラックボックス化しています。

レガシーシステムの保守や運用に人的リソースが割かれ、IT予算が圧迫される状況が続いており、2025年以降に最大で年間12兆円規模の経済損失が生じる可能性があると指摘されました。

「2025年の崖」を解決するためにも、企業はレガシーシステムの刷新やDX人材の育成、確保などを早急に進める必要があります。

出典:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」


市場競争力を高めるのに役立つ

スマートフォンやAIの普及によって、日々の事業活動から生み出されるデータ量は飛躍的に増加しています。

企業は膨大なデータを集約し、設計開発、生産管理、販売戦略などの業務プロセスに活用して、付加価値を生み出せれば、市場競争力の強化を図れます。

また、DXの取り組みを通じて、リアルタイムなデータ分析による迅速な意思決定や、市場の変化に柔軟に対応できる組織構築が可能です。

 


消費者ニーズに対応できる

現代の消費者ニーズはますます多様化しており、購買行動もオンラインショッピングやモバイル決済の普及によって大きく変化しています。

消費者ニーズや購買行動の変化に迅速に対応するためには、DXを活用して顧客データの収集や分析が不可欠です。

また、DXによる顧客データ分析は需要の予測や商品のパーソナライズにも役立ちます。

DXを通じたデータ活用は、顧客対応の効率化だけでなく、消費者ニーズに応えて競争力を持続的に高める重要な要素です。

 


BCPを推進できる

BCPとは、災害やパンデミックなどの緊急事態が発生した際に、企業や団体が事業を中断させず、スムーズに継続するための事業継続計画(Business Continuity Plan)です。

政府も推進を奨励しており、安否確認サービスの導入やリモート会議システムの利用、クラウドストレージの活用などは企業のリスク管理で重要な役割を果たします。

緊急事態が発生した際でも、情報収集や共有を迅速に行えて、人手が限られた状況でも必要な業務の継続が可能になるため、DXによってBCPの推進を検討しましょう。

 


DXの進め方

DXは、企業の競争力を向上させ、ビジネスの持続的な成長を実現するための重要な戦略です。実現するまでのステップを把握し、的確かつスムーズにDXを進めてみましょう。

DXの進め方を以下の6つの手順で解説します。

  1. 現状を把握する
  2. DXに関するビジョンと中期経営計画を策定する
  3. ロードマップを作成する
  4. DX推進体制を構築する
  5. DXを実施する
  6. PDCAサイクルによる評価と修正を繰り返す

現状を把握する

DXを推進すると決めても、何から手を付ければよいかわからない、自社のDXレベルがわからないケースが多いです。

そのため、まずは自社の現状を把握するところからはじめましょう。

例えば、経済産業省が提供する、自社のDX進行度の自己診断に利用できるDX推進指標があります。指標を用いて、企業の組織体制、ビジョン、技術活用状況などを診断し、課題の特定と今後の優先事項の整理を行います。

企業のDXへの取り組みを客観的に評価するための「健康診断」に近い指標で、自社の現状を可視化し、必要なリソースや具体的なプランの明確化が可能です。

DX推進指標を使って自社のDXがどの段階にあるのか、次に取り組むべき項目は何かを知ることができ、DX推進を加速する効果も見込めるでしょう。


DXに関するビジョンと中期経営計画を策定する

現状を把握したら、企業が達成したい最終的なビジョンを明確にしましょう。

ビジョンとは、企業がどのように成長し、競争優位を確立するかなどの長期的な目標をさします。

DXは単なる一時的な取り組みではなく、持続可能な成長戦略として位置付ける必要があり、策定したビジョンを中期経営計画と連動させることが重要です

例えば、収益向上や新規事業の創出、コスト削減などのDXが目指す具体的な成果を提示し、プロジェクトにどれだけ投資するかなどを策定しましょう。

また、理念やビジョンを明確にし、社内で共有することで組織の一体感や実行力を高められます。


ロードマップを作成する

ロードマップは、課題解決や目標達成のために必要な取り組みを時間軸に沿って整理した具体的な計画書であり、全社的な指針です。

現状の課題を洗い出し、解決するための優先順位を明確化し、フェーズごとに取り組むべき項目や目標を設定して、ロードマップを作成します。

明確なロードマップにより課題やミッションを全社で共有できれば、組織の一体感やモチベーション向上にもつながるでしょう。


DX推進体制を構築する

DXを効果的に推進するには、専門の組織体制を構築しましょう。

DXの取り組みが社内の他の業務と兼務されると、日常業務が優先されてしまい、DXが後回しになる可能性があります。

専任のチームや部署を設ければ、DX推進に集中できる環境を整えられるでしょう。

なお、DXを成功させるためには、デジタル技術やデータ分析に関するスキルを持つ人材が必要です。

自社で専門の組織体制を構築できない、またはスキルや知識を持った人材が不足している場合は、外部の専門家やコンサルタントとの連携を検討しましょう。


DXを実施する

ロードマップを策定し、推進体制が整ったら、計画に基づいて具体的なアクションを実施します。

また、DXの実施は単なる計画の遂行ではなく、年次、月次、さらには週単位で細かい目標(ゴール)を設定し、進捗を定期的に確認することも必要です。

目標達成に向けた進捗や成果を具体的に測定するために、具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、戦略的にDXを進めましょう。

 KPI(重要業績評価指標)とは、業務のパフォーマンスを計測・監視するために置く指標です。

例えば、処理時間の短縮やコスト削減率などの業務効率化の成果や、顧客アンケートやリピート率などの顧客満足度、DXによる新規ビジネスモデルの収益などのKPIを設定し、定期的にモニタリングすれば、計画とおりに進んでいるか客観的に評価できます。


PDCAサイクルによる評価と修正を繰り返す

KPIを設定して軌道修正が必要な場合は、PDCAサイクルによる評価と修正を繰り返しましょう。

PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのステップを繰り返し、業務や品質を改善していく手法です。

KPIに基づいて現状の課題や改善点を洗い出したら、ロードマップとKPIに反映させ、新しく計画した内容に従ってDXを実施します。定期的に成果や進捗状況を評価して、現状の課題の把握と修正を継続し、業務効率や成果物の精度を段階的に高めていきます。

PDCAを短期間で繰り返せば、問題が発生しても早期に修正が可能となり、大きなリスクを回避しながら目標達成へと近づけることが可能です。

長期的なプロジェクトでは柔軟性と適応力が求められるので、PDCAサイクルを活用して成果の最大化を目指しましょう。


DX推進における注意点

DXは、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出など多くのメリットがある一方で、DXを進める際は注意すべき点もあります。メリットを最大限に活かすために、以下のポイントを把握することが大切です。

  • 企業全体で共有する
  • IT化と混同しない
  • 人材を育成する

以下で詳しく解説します。


企業全体で共有する

DXは特定の部署や一部のプロジェクトだけで達成できるものではありません。全社的な取り組みとして、部門間の連携を図りながら組織全体を変革する必要があります。

DXの推進には経営層の強いコミットメントが不可欠であり、経営陣がDXの重要性を認識し、ビジョンやロードマップの策定を通じて全社に浸透させ、一体感を生み出すことが重要です。

組織全体の協力体制が整えば、DXのスピードと効果は飛躍的に向上するでしょう。


IT化と混同しない

DXとIT化はデジタル技術を活用する点で似ていますが、あくまでIT化は社内の業務改善を目的とした取り組みで、DXとは目的や効果が大きく異なります。

また、DXを行うこと自体が目的ではなく、DXによって企業が抱える課題を解決し、競争力の向上や持続的な成長などの価値を生み出していくことが目的です。

DXを推進する場合は、目的と手段を混同しないように注意しましょう。


人材を育成する

DXを持続的に成功させるためには、技術的な投資だけでなく、デジタルに精通した人材の育成が不可欠です。

「2025年の崖」問題やレガシーシステムで指摘されているように、現在導入している最先端のシステムも、やがて老朽化して問題を引き起こす可能性があります。

そのため、導入した技術の維持や管理、さらなる改良に対応できる人材を継続的に育成しましょう。


DXを成功させるためのポイント

DXは業務プロセスの変革や既存ビジネスモデルの進化、新規ビジネスモデルの創出などのメリットが得られる取り組みです。DX推進を効果的に進めるためにはポイントを押さえて実践することが大切です。


経営陣が主導して意識改革する

DXを成功させるためには、DXの目的と意義を組織全体で理解してもらう必要があります。

そのためには、経営陣が率先してDX推進に取り組む意義を理解し、従業員の意識改革を促すべきです。

また、DXには複数の部門が垣根を超えて協力する必要があるため、体制作りを経営陣主導で行うと良いでしょう。


ゴールを明確にする

DXを成功させるためには、企業が目指す目標やゴールを明確にし、社内で共通の認識を形成しましょう。

ゴールが明確であれば、現在の状況とのギャップを分析でき、具体的なDX戦略を策定できます。

例えば、「顧客満足度を向上させる」「新規事業による売上比率を30%に拡大する」など、具体的なゴールを設定すれば、従業員が自身の役割を認識し、DXへの意識を高めることが可能です。

また、DXは長期的な取り組みであるため、最終的なゴールだけでなく、中間的なKPIも設定し、段階的に進捗を確認しましょう。


段階的に進める

DXを推進する際は、全社的な大規模プロジェクトをはじめるのではなく、スモールスタートで段階的に進めましょう。

大規模なシステム導入や業務改革を一度に実施すると、現場での混乱や業務の停滞、リソース不足による失敗のリスクが高まります。

ロードマップの策定の段階で、徐々に成果を積み重ねる方法を意識し、一部の部署や業務からDXに着手しましょう。


DXの導入事例

DXは、今後のビジネスの成長と競争力向上のために、多くの企業が取り組んでいくべき課題です。実際にDXを導入した企業が、どのような問題を解決しどのように成果を上げたのか紹介します。

自社で導入を検討している方は参考にしてください。


事例①リース・レンタル事業会社

あるリース・レンタル事業会社は「2025年の崖」問題を早期に意識し、リース基幹システムの更新に関する議論をいち早くスタートさせたことが、DX成功の鍵となりました。

DX戦略では4つの戦略と目標を打ち立て、社長直轄組織としてデジタル・トランスフォーメーション特命担当を設置し、スタートアップとの連携や主導的に基幹システムを刷新しています。

経営陣が主導して意識改革した結果、全社的な方向性を共有でき、DX導入に成功した事例です。


事例②電機メーカー

ある電機メーカーはリーマンショック後の経営危機をきっかけに、データとテクノロジーを活用し、顧客やパートナーとともに社会の課題を解決する社会イノベーション事業に注力する戦略を採用しました。

経営トップの関与とDX推進の強いメッセージ発信に加えて、社員の意識改革も重要と考え、DXを推進する組織を設立し、外部組織との連携も取り入れています。

ビジョンや中期経営計画などのゴールが明確化され、現状の課題や必要な工程がわかりやすくなり、結果として組織全体の意識を統一できた事例です。


事例③金属・製綱・鉱業・非鉄金属メーカー

ある金属・製綱・鉱業・非鉄金属メーカーでは、日本の少子化や高齢化による労働力の減少に対応し、ものづくりの力を維持・成長させるための「2030年ビジョン」を策定しました。

デジタル推進室を設け、社長は繰り返し2030年ビジョンを伝え、世界と戦うためにデジタル技術の活用が必須だとアナウンスしています。

熟練の加工者が判断していた業務を、データに基づき判断する形式知に変換する取り組みからスタートし、生産性を向上させDX導入に成功した事例です。


DXの情報を収集するなら「Japan DX Week」へ

RX Japanが主催する展示会「Japan DX Week」では、DXに関連した技術・製品・サービスが多数展示されます。

「Japan DX Week」の構成展は以下の通りです。

AI・業務自動化 展

今まで人が行っていた業務を、主にAIを活用して「自動化」するソフトウェアや関連サービスが出展する専門展

社内業務DX EXPO

現代のビジネス環境における社内業務のDXを支援するための総合的な専門展
 

データドリブン経営 EXPO

社内外のあらゆるデータを経営に生かすためのソリューションが集まる専門展
 

現場DX EXPO

工場などの生産現場、建設・工事現場、インフラ、倉庫など、様々な「現場」で働く人々の業務や働き方をDXする専門展


DXの導入を検討している場合は、ご来場の上、最新情報を収集してはいかがでしょうか。また、DXに関連した技術・製品・サービスを開発・販売・提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。

下表に、開催地域・開催場所・日程をまとめました。


日本最大級のDX総合展

【構成展示会】
AI・業務自動化展、社内業務DX EXPO、
データドリブン経営 EXPO、現場DX EXPO


DXは企業の競争力向上に役立つので導入してみよう

DXは、企業にとって競争力の向上や新たな価値の創出を可能にする有力な手段です。業務の効率化や新たなビジネスモデルの確立が期待され、急速に変化する市場環境に適応できる企業へ進化できるため、DXを導入してはいかがでしょうか。

RX Japanが主催する展示会「Japan DX Week」では、DXに関連した技術・製品・サービスが数多く展示されます。DXの導入を検討している場合は、ご来場の上、最新情報を収集しましょう。

また、DXに関連した技術・製品・サービスを開発・販売・提供している企業の場合は、新規顧客開拓のために、ぜひ出展をご検討ください。

 

日本最大級のDX総合展「Japan DX Week」の詳細はこちら


▶監修:水谷哲也 氏

プロフィール:水谷IT支援事務所・代表。大阪府よろず支援拠点、三重県産業支援センター、商工会議所などで経営、ITを中心に累計7,000件以上の経営相談を行う。中小企業診断士、ITコーディネータ・インストラクター、アプリケーション・エンジニア、販売士1級&登録講師。著作:「バグは本当に虫だった」(ペンコム・インプレス)、「インターネット情報収集術」(秀和システム)、電子書籍「誰も教えてくれなかった中小企業のメール活用術」(インプレスR&D)など。また、「アスキービジネス」、「エコノミスト」、「仕事とパソコン」などに連載。現在、AllAbout「企業のIT活用」担当ガイドとして、IT導入・活用にまつわる様々な情報を発信中。

HP:https://www.mizutani-its.com/



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